第7回全国作曲コンテスト 4周年特別企画
課題詞 時計台~絵伝説~
作詞/遠藤邦夫
最優秀作曲賞
髙 幸吉 様 北海道登別市在住(61歳)
特別賞
浦島 鱗太郎 様 静岡県下田市在住(34歳)
ご応募頂きました作曲家の皆様、渾身の力作本当に有難うございました。
勿論私自身も1作のためにどれだけ時間を費やしたことか、と思います。詞の出来栄えはともかく、皆様のご尽力に相応しうる努力は費やしたものと、自負しております。
「時計台~絵伝説~」この作品、想を得たのは3年前に溯ります。
にもかかわらず仕上げの数週間は、才能の無さに苛まれながらのちょっとした苦行です。私の場合、ほとんどの作品が短時間のインスピレーションで生まれ出てくれていません。ですから、皆様から寄せられる作曲作品へのこだわりと愛着はひとしおです。
ご応募作品すべてから、1作1作がどれだけ自分の耳に浸み込むものか、最大限の時間を費やすこと、わが身に義務として課し続けています。例え第一印象でのめり込む作品があったとしてもです。
そのような慎重な選考の経緯を以って評価を獲得したのが浦島氏の作品です。
前回の「北の慕情歌」そして今回と2作連続の最優秀作曲賞に輝いた髙氏の作品が、詞の1場面1シーン毎を追体験するように紡いでいくのに対して、浦島氏の曲にはそのような作法は微塵も感じられませんでした。
異質な展開でした。身をもって相当な時間をかけて聴くのですが感興を呼ぶこともなく、ずっと選考外に置かれていた曲でした。
しかしある頃を境に、乾いた砂地に水が浸み込むように部分部分のメロディーが水脈で結ばれ、最後の「リラの花咲く時計台」へ一気に流れ込むような筋道にかなりの選考者が導かれたものです。恐らくそんなふうに誘導する、作曲家の優れた意図が潜んでいるんだろうと、2,3人が異口同音に語ったものです。曲が耳に浸みついた後、私など、髙氏の作品を自由な地上の音楽、片やレンガの建物の地下で奏でるレジスタンスか、などイメージの広がり楽しませて頂きました。
作詞者の想定する範囲を超える曲がこうした形で現れたこと、そしてそれを見逃さずに済んだこと、実にホッとした気持ちで迎えた選考会でした。
次回は「アルビノーニを聴きながら~具わらざる人々~」「熱海えにしの色男」
「雪乃降臨」の3曲揃っての選考会になります。
完成まで道半ば、あと1歩の皆様にエールを送ります。
変わらず楽しみにお待ちしております。
今回ご応募頂きました各地の皆様に改めて感謝そして厚く御礼申し上げます。
ご健勝とご活躍を心よりお祈りいたします。
平成29年6月6日 熱海をうたう会代表 遠藤邦夫